Lesson 1


花を束ねて‥

花を束ねたブーケやコスモスの群生を描くと、どこから描くの?という質問を度々受けます。
実物の花を目の前において描きますが、植物はすぐに姿が変化するので、全ての花を同時に描写することは難しいです。
ですから画面の一番手前の花から描き始め、徐々に後ろの花を一輪ずつ描き加えていきます。
春の花々を青いブリキの花器にいけました。一緒に描いていきましょう。

1. 花をいけたら仕上がりをイメージして構図を考えます。花の高さ、横の幅、テーブルに投げかける影を見て、上下、左右に余白をとり、花器の位置を決めます。そしてまず一番手前のオダマキから描きます。

2. 次にワスレナグサ、フランネルフラワー、アジュガを描きます。
花が混み合ってくると、どこを描いているのか分からなくなるので、絵具で薄く彩色しながら進めます。
また、フランネルフラワーのように表面が繊毛に覆われた植物は、鉛筆(2H)で描写した後に綿棒で軽く擦ってぼかすと、毛羽立ちが表現できます。
3. スノードロップを足します。花器の花は途中でいけ直すと配置が変わるので、紙の上で花をいけるように一輪ずつ描き足していきます。
隣り合った花や葉の位置を考えて、後ろに置いた花には陰をつけます。

4. さらに奥の方にもアジュガやオダマキを描き足します。このときに束ねた花の後方を意識して、後ろ向きの花や横向きの葉っぱを入れると、全体の立体感がでます。

5. 花が描けたら花器のデッサンをして、テーブルに投げかける影と映り込みを描きます。全体のバランスを確認します。右の余白に対して、花器の持ち手の直線が強いように感じます。

6. 花器の持ち手の辺りに 花と葉を描き足して印象を優しくします。
花器を彩色して完成です。

 


2Hの鉛筆でデッサンをしたら、綿棒で軽く擦り、繊毛を表現

します。

鉛筆の上から絵具で彩色します。

使用した画材:ホワイトアイビスF6(410㎜×318㎜)300g  鉛筆H,2H

透明水彩絵具 綿棒 消しゴム

練り消しゴム



ホオズキ

ホオズキの外側の皮のようなところは花のつぼみを包む萼、実はその中にある小さな丸いものです。
お盆に先祖の霊を迎える花として供えます。火を灯した提灯のように見えるからでしょうか。素敵な目印ですね、描いてみましょう。

① H又はHBの鉛筆で下描きをします。茎を延長した中心軸を取って円錐形のかたまりを捉えます。本番の輪郭線を引く目安となります。手首を使って軽く引きましょう。

② 当たり線を練り消しゴムで消しながら、2Hの鉛筆又はボールペンで輪郭線を清書します。鉛筆は優しい線が引けます、それに対してボールペンは黒くしっかりした線が描けます。

出っ張っている葉脈は線を2本にして強調して、細い葉脈は鉛筆の先を尖らせて細い線を描きます。

 

③ 透明水彩絵具で彩色をします。グリーン、イエロー、オレンジと色が変化しています。どの色にも共通する色のイエローを下塗りに使います。

紙の吸水力と色の発色を上げるために、水を多く含んだ絵具をたっぷりと塗ります。

 

ホルベイン:レモンイエロー

W&N:ウインザーイエロー


④ 下塗りの絵具が乾いたら、左側のホオズキにバーミリオンを右側の二つにはバーミリオン、イエローディープとグリーンを使います。絵具を置いたら、水だけを含ませた筆で絵具を伸ばすと綺麗なぼかしが描けます。

 

ホルベイン:バーミリオンヒュー

     パーマネントイエローディープ

     サップグリーン

W&N:ウインザーレッド

   カドミュウムイエロー

   パーマネントサップグリーン

⑤ 葉脈の凸部を残して凹の部分や陰の部分にそれぞれの色を重ね塗りします。

左側のホオズキからのぞいている実と皮の内側にはイエローを塗らずにバーミリオンだけを入れます。

⑥ 全体に彩色ができたら、2Hの鉛筆またはボールペンを用いて、着色で消えてしまった輪郭線や陰影を描き加えます。


⑦ 葉脈がグリーンで残っている部分や、茎の茶色く変色した部分など仕上げの彩色をします。外皮の乾いた感じを表現するときは、水を少なくした絵具で画面を筆でこするようにすると感じがでます。

卓上の影を2Hの鉛筆で描き、綿棒でこすって紙になじませます。

⑧ 卓上の影にもホオズキの色を付けて出来上がりです。

使用した画材

アルシュ水彩紙 荒目 23×31㎝ 300g

鉛筆2H  ボールペン 透明水彩絵具

練り消しゴム 消しゴム 綿棒 

 



コスモス

秋の花、コスモスを描きましょう。

花びらと呼ばれている舌状化は8枚、中心は管状花の集まりです。咲き始めと終わりでは様子が異なります。よく観察しましょう。

茎が細く花があらゆる角度を向くので、花を仕上げてから茎や葉を描くと良いでしょう。

①まず鉛筆Hでデッサンをします。花の位置を決め、花の中心部の形をとり、花の大きさと同じ円を描きます。正面は正円、横を向いた花なら楕円を描きます。右側の花のように花びらの側面が見えているときは奥行きを描くためにカップ型に線を入れてください。

次に、コスモスの花びらは8枚ですから、花びらの中心線を8本引きます。線はカーブをつけて描き花びらの丸みを出します。そして花びらの輪郭を軽く描きます。

鉛筆の線を修正するのは練り消しゴムを、きれいに消してしまいたいときは消ゴムを使います。

②鉛筆を2Hに持ち替えて、細部を観察しながら清書をします。真ん中の花のように中心部分と花びらを描いたら、左側の花のように花びら一枚ずつに筋も描きます。

③花が描けたら、要らない線を平らに伸ばした練り消しゴムを押しつけて薄くします。これで初めの軽いデッサンに用いたHの鉛筆の線は消え、清書した2Hの線が残ります。


④右側と真ん中の花に、ブライトローズをごく薄く塗り乾かします。透明水彩絵具は下に塗った絵の具をよく乾かしながら重ね塗りすると色の発色がきれいです。右側の花にはキナクリドンバイオレットを重ね塗りして花びらの丸みや筋を描きます。

⑤左側の白い花には、アイボリブラックとレモンイエローをパレットで混色して濁った暗い色を作り、影や筋を描きます。透明水彩絵具を混色すると色が濁るので使う部分を少しにします。

中心部は咲き始めと終わりでは色が違います。レモンイエローまたはパーマネントイエローディープを塗ります。

⑥それぞれの花に色を重ね塗りします。筆は花びらの丸みを表現するために、曲線を引くように動かしてください。


⑦花が描けたら、蕾や葉のデッサンをします。蕾も開かないうちに先に彩色します。

⑧葉は細く重なっているので描くのが大変です。一枚葉を取って画面の上に置いてみると規則性があるのが分かります。

⑨葉や茎にレモンイエローをごく薄く塗り、乾かします。次にパーマネントグリーンを重ねます。細い葉を何回も重ね塗りしていると色がはみ出すので、細かい部分を彩色するときはパレットで色を混色してから塗ると良いでしょう。


⑩葉にサップグリーンを入れます。絵具は色の濃い部分にのせて、水で明るい方へ伸ばします。絵具用の筆と水だけを含ませた筆の2本を使ってください。

絵具をおきます。

水で絵具を伸ばします。

⑪蕾は硬く光沢のある萼に包まれていますので、丸く張りのある部分を塗り残すと光沢が表現できます。

⑫葉が混み合った部分は先に手前の葉を描いてから、薄い緑の絵具だけで奥の方に葉を描くと遠近感がだせます。

⑬完成です。サインを入れましょう。

使用した画材

ホルベイン水彩紙ホワイトアイビスF4(333×242㎜) 300g

ホルベイン透明水彩絵具 鉛筆H、2H

練り消しゴム 消しゴム



柿は奈良時代に中国から渡来したとされます。甘いものが少ない時代には貴重な食物であったでしょう。

「木守柿」といって、熟した実を一つだけ木に残しておく風習があります。野鳥のための思いやりでしょうか、神への供物でしょうか。収穫の一部を自然に返す美しい習慣です。

柿はヘタの部分を先に描くとよいでしょう。さあ、描いてみましょう。

①まず鉛筆Hでデッサンをします。

ヘタの部分を丸や四角の単純な形に置き換えてみます。

②位置が決まったら細部を観察しながら描きます。ヘタの葉脈も凹凸を見ながら描きます。

③ヘタが描けたら次に実の輪郭線を描きます。単純な曲線ではなく、膨らんで張り出した場所を意識しながら線を描きます。


④2Hの鉛筆に持ち替えて清書します。光が当たって明るい部分は優しい線を、影になっている部分は黒く力強い線を引くと、明暗を描き分けることができます。

清書ができたら練り消しゴムを画面に押し付けて①~②の下描き線を消します。

⑤彩色をします。

まずパーマネントイエローディープを薄く塗ります。絵具は水の量を調節して、紙の白色が透けて見える薄い絵具と、水の少ない絵具を使い分けます。

光を反射して最も明るく見える部分は色をつけずに紙の白を残します。

また、ヘタ近くの白っぽく見える部分は薄い絵具を塗りますが、後に実の色を塗り重ねてもこの白っぽい部分は塗り残しておきます。

⑥パーマネントイエローディープが乾いてからキナクリドンレッドを重ね塗りします。球体は光源の反対側およそ1/3と下側1/3が暗くなると想定すれば明暗がとらえやすいでしょう。


⑦実が熟してなく緑色が残っていたり、粉を吹いたように白っぽくなっていたりしますのでよく観察しながら色を重ねます。

⑧ヘタは乾燥して硬くなっています。乾いた感じを出すには筆先の水分を切ったパサパサした筆で紙をこするようにします。ヘタは硬く、実は柔らかく、質感を出しましょう。

上、水を含んだ筆で描く。

下、水気を切ったパサパサした筆で描く。


⑨影になっていて色が濃く見える部分には、絵具を混色して影の色を作ります。混色した絵具は濁るので少しの面積に使います。

 

 

 

上段:パーマネントイエローディープ+キナクリドンレッド+アイボリーブラック

下段:パーマネントイエローディープ+キナクリドンレッド+テールベルト

⑩卓上に投げかける影をつけて完成です。

使用した画材

ホルベイン水彩紙ホワイトアイビスF4(333×242㎝) 300g ホルベイン透明水彩絵具 鉛筆H、2H 

練り消しゴム 消しゴム



千両

赤い実を鑑賞するために庭に植えられ、正月の飾りや新年の切り花に欠かせない縁起の良い植物としてよく知られています。

千両に対して万両があり、ほかにヤブコウジを十両、カラタチバナを百両と呼びます。

①まず鉛筆Hでデッサンをします。センリョウの実には特徴的な二つの黒い小点が見られます。黒い点と実の付け根を結ぶ中心線を引き、中心線からほぼ均等に幅を取り、輪郭線を描きます。

②2Hの鉛筆に持ち替えて清書します。葉は対生し先がとがり縁には鋭い鋸歯があります。

③実に着色します。小さな実に色を重ね塗りするのは難しいので、あらかじめ色をパレットで混色します。

パーマネントイエローディープ+キナクリドンレッド

隣り合った実を続けて着色すると色が滲み輪郭線がぼやけるので、一つ空けて着色します。光っている部分は色を付けずに紙の白を残します。

 


④全ての実に色がついたら、混色した同じ色で2回目を塗ります。赤みの強い部分にはレッドを多くして変化をつけ、重なっている部分には3回目を塗ります。

⑤葉にサップグリーンを塗ります。光る部分を残しながら全体に着色します。

 

⑥葉脈を残しながらサップグリーンで2回目を塗ります。


⑦色が濃い部分にはさらにサップグリーンを重ねて塗り、葉が重なっている部分にはテールベルトで影をつけます。

⑧バーントアンバーで葉の縁のとがった鋸歯を描いて完成です。

使用した画材

ホルベイン水彩紙ホワイトアイビス

F4(333✖︎242㎝)300g

ホルベイン透明水彩絵具 鉛筆H、2H

練り消しゴム 消しゴム

 



リンドウ

リンドウは世界の温帯や山岳地帯に約300種が分布しています。根に薬効があるものは、古代から殺菌、強壮剤として用いられてきました。

葉は茎を抱くように対生してつき、秋に先が5裂した鐘形の花をつけます。花の内側に白い斑点があるリンドウもあります。花が開いたらのぞいて見てください。

リンドウを描きます。花は曇の日や夜間には閉じてしまうので開いている花を先に描きます。

 

①まず鉛筆H

でデッサンをします。

花をよく観察しましょう。5枚の大きな花びらの間に小さな花びらがあります。


②下書きができたら、鉛筆を2Hに変えて清書します。細部を観察しながら丁寧に描きます。

③彩色をします。花をわかりやすくするために、先に葉に薄く色をつけても良いでしょう。

④花にウルトラマリンディープを薄く塗ります。


花弁が重なり影になっているところに絵具を置いて、花弁の先へ水でのばします。色の濃淡で花びらの膨らみを表現しましょう。

⑤花が青く見える部分と紫に見える部分があります。パーマネントバイオレットを重ねたり、パレットでウルトラマリンディープとパーマネントバイオレットを混色して、近い色を作り彩色します。混色した色は濁りますので使う面積を少なくして、全体の色が暗くならないように注意します。


⑥明暗を見ながら色を重ねて花を仕上げていきます。

 

⑦青みがかっている葉の裏側にコバルトブルーを薄く塗り、乾いたらテールベルトを重ね塗りします。

⑧葉の表側にはサップグリーンを重ね塗りします。花を包み込むように筆を動かすと立体感が表現できます。


⑨葉脈を描き、重なった葉に影

を入れます。花に使ったウルトラマリーンディープを影の色に使います。

⑩サインを入れて完成です。



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