chapter 3  台所のにぎわい


野菜、果物を描いた水彩画と銅版画

野菜

百日紅と牡丹の間には小さな畑があり、少しだけの収穫を楽しんでいます。

ちっぽけな種子から生命の糧が生成されていくのを観察するのは、私にとって大きな喜びです。

 

「野菜」として広く知られているのは、ある植物のある時季の、ある部分だけ。

だから自分で育てれば思いがけない発見の連続です。

私の野菜作りは観察し描くのが目的。花の時を、果実の時を、それぞれの輝きを描きます。

 

 そしてモデルさんの役目が終わったら食卓に上がります。

小さなゴマから大きなカボチャまで

ひとつひとつを丁寧にいただきましょう。

 





夏の手仕事

朝露が葉っぱの上で光っています。伸びていく野菜の葉はとても大きいので、畑全体がむくむくと盛り上がっていくように見えます。
蜂たちは花から花へ忙しく動き回り、巣まで何往復もしたでしょう。おかげで私は雌花を探さなくても、ここは彼らに任せておけます。
午後、友人が夏野菜のピクルスを作りに来ました。
ガチャガチャと大小様々なガラスびんを並べると、早速野菜を切りはじめます。たっぷりのお湯を沸かしている間に、私は竹かごとはさみを持って庭へハーブを摘みに出ます。
タイム、セージ、ローズマリー、オレガノ、イタリアンパセリ、ミント、ローリエ。 殺菌効果があり香り高いハーブは
ピクルスに欠かせません。
茹でた野菜を冷ます間に、友人は野菜とハーブに魚と肉を合わせて手際よく夕食を作ってしまいます。ひぐらしが夕風を運んでくる頃、さらに友人が加わり美味しい食事に話が弾みます。
夏の手仕事で出来上がったびん詰めのカラフルな野菜たちはこの先の秋も冬も、食卓を彩ってくれます。